第1日目 2005/8/20

今年もアドバンシング物理公開講座が,同志社高校にて開催されました。
第1日目
 午前の部
サーカス実験「物質の感触をつかむ」
実験1 「引っ張り試験」
実験2 「圧縮試験」
実験3 「硬さ試験」
実験4 「材料のモデルとしての身近な物質の性質」
実験5 「密度測定」
実験6 「電気伝導性」
実験7 「光学的特性」
講義「材料研究へのいざない」 講師 西田俊彦 教授(京都工芸繊維大学)

第1日目
 午後の部
実験「物質の剛性をはかる」

実習「最適な物質を選択する」

探究学習のための予備実験
金属1      金属の構造と熱処理
金属2      転位の“泡−いかだ”モデル
紙1        コップの熱伝導性
紙2       紙の構造と強さ
セラミック1  セラミックスと電気抵抗
結晶1      それぞれの性質と構造



9:30開会
村田先生(本研究会代表)のあいさつ
あいさつに続いて実験ノートの取り方についての講義
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【受講者の感想】
方眼のノートを使うこととか,なるほどと思うことが多かった。
思ったこと,行ったことはすべてノートに書き込むということと,間違っても消さずに残しておく,の2点よく分かった。
とてもよく分かった。今まで消しゴムを使ってしまっていた。定規も使っていた。グラフは後で書いていた。書くことを後回しにしていた。今これが知れて良 かった。このことは他の所ではあまり教われないと思うから絶対忘れない。


サーカス実験「物質の感触をつかむ」 
山崎先生による全体のオリエンテーション
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実験1
「引っ張り試験」
p 銅と真鍮 の線を約1m水平に張り,おもりを使って線を引っ張ります。どれくらいの重さで切れるのか,またそのときの様子を観察します。
安全のため防護めがねをかけています。
実験2
「圧縮試験」
p コピー用 紙を円柱状に工作し,どれくらいの重さでつぶれるのかを調べる。
写真は1個250gのおもりをどんどん乗せているところ。
実験3
「硬さ試験」
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ステンレ スやアルミの金属板にポンチを落とし,どの程度へこむのか(へこみの直径)を測る。
垂直に落とすため,ガイドとなる筒を使用して実験している。
実験4
「材料のモデルとしての身近な物質の性質」
p リンゴに ナイフを入れるときの方向による切れ味の違いや,リンゴ果肉をがじって感触の違いを味わいます。
またシリープティ(イギリスのおもちゃ)やゼリー,寒天などを用いて,脆性破壊の特徴や複合材料の強さについて実験。
実験5
「密度測定」
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鉄や鉛, ガラス,木片,ポリスチレンなどの立方体を使って,質量や体積を測定して,それらの密度を求める。
またあらかじめ用意してある引っ張り強さの表を利用して,「引っ張りの強さ−密度」グラフを作成する。
実験6
「電気伝導性」
p 数種類の 金属線や,シャープペンの芯,ガラス棒,乾いた糸その他を材料にして,抵抗(またはコンダクタンス)を測定する。
それぞれの材料は太さや長さなどバラバラなので,測定したそのままのデータではどれが電気を通しやすいかは言えない(フェアでない)。フェアな比較のため に何をしなければならないでしょうか?
実験7
「光学的特性」
p 透明度が 物質の分裂の状態(塊に対する粉末)によって,いかに変化するかを探求する。
硫酸銅や岩塩,砂糖の結晶を粉々にして透明度の比較をする。
かき氷をつくり,透明から白くなくことを確認し,シロップをかけたとき透明度はどのように変化するか観察。写真はその氷を食べているところ。
10分ごとに実験がローテーションします。大忙しの生徒たち。



講義「材料研究へのいざない」   講師:西田俊彦 教授(京都工芸繊維大学)

「材料研究」とはどのようなものなのかを豊富な例とともに紹介していただきました。
研究の条件(「新規なもの」,「皆が口を挟む余地がない方法で説明できているもの」),セラミック研究の必要性とおもしろさ,この公開講座で探求実験する ときの心構えなどをやさしくお話しいただきました。

【受講者の感想】
ふだんからよくある身近なものでも深く見れば様々なものが分かると思っ た。
少し難しい話だったけど,いろいろな話が聞けておもしろかった。
セラミックの「応力集中」の話は大変興味をひかれました。
京都工芸繊維大学工芸学部物質工学科極限材料学研究室

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実験「物質の剛性をはかる」

6つの班に分かれて,チタンや銅,真鍮,アルミ,鉄などの細い線を高校の実験室程度の装置を用いて,定量的な引っ張り試験とその解析を行いました。
応力,ひずみ,応力-ひずみグラフ,ヤング率,弾性と塑性,降伏点,破壊応力などの概念を学びました。

谷口先生による全体的な講義
 

実験は1班4〜5人で構成。おもりを入れる係,のびを測定する係。データを記録する係,データをパソコンに入力する係,全体の指揮といった役割分担をしました。
あらかじめ用意した表計算ファイルにデータを入力するだけで応力ひずみを計算し,グラフ化してくれます。
もちろんヤング率破壊応力も簡単に分かります。
 

6つの班の試料は異なります。それぞれの班は黒板上のポスターに結果を書き込みに来ます。
最後に谷口先生がまとめをなさいました。
 


コンピュータ実習「最適な物質を選択する」

「アドバンシング物理AS」CD-ROMに入っているケンブリッジ大学製作による物質(材料)選択チャートを用いて,製品設計のため材料選択の観点について学びました。
ひとりに1台パソコンを用意し,バッテリーだけで動かしています。
 
スクリーン上のチャートを説明する萬處先生


初めに,「送電線にふさわしい金属」を例に全員で考えていきます。アルミと銅が候補に残り,用途によって使い分けると良い,という結論になりました。
次に,フライパン,めがねのフレーム,ガソリンタンク,スキーのストック,階段の手すり,イヤリング,金属バットや木製バット・・・・などを例に,それがどんな素材を用いるとよいのか隣同士の生徒と結論を出し合いました。
アンケートを見ると,意外にも分かりやすく,のめり込んだ様子がうかがえました。

探究活動のためのオリエンテーションと予備実験

探究活動を行う上でのいくつかの観点の説明の後,班ごとに分かれて探究テーマの基礎学習や基礎実験に取り組みました。
オリエンテーションを行う笠先生


転位の“泡−いかだ”モデル
紙の構造と強さ
サーモグラフィを用いた熱伝導の違いの観察
光学顕微鏡による金属表面の観察
(高額な装置らしい・・・)
クモの糸を顕微鏡で観察し,太さを測定
クモの糸を試料に引っ張り試験機で実験
実験ノートを書く生徒
ガスバーナーとふいごで金属の金属の焼き入れを行う

交流会

参加してくれた生徒全員による交流会。ケーキとジュースも出され,楽しい雰囲気です。
 

 

がんばるスタッフ

受付やジュース・ケーキの買い出し,実験補助(メインのときも),ぎりぎりまで良い実験書を検討したりと,裏方の皆さんにも支えられた公開講座です。
 



全国から注目される

毎年なのですが,全国からたくさんの見学者に来ていただいています。
スタッフのカメラやビデオも含めると,相当な量の撮影となっています。でもそれらは物理教育研究に役立てていただいています。・・・・班によっては生徒より多い大人の数です。
 



1日目はこれで終わりです
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